それは201811月のある日のことでした。
まだ在宅で介護されていた認知症の母は、よく食べこぼしていたり、鼻水や涙がでやすかったりしていたので、ティッシュペーパーは常に手元にありました。
普通の人なら使い終わったらすぐに捨てるなど、いつまでも手に握っていることはないですが、母は自分でそれができなくなっていました。
その日もなにかに使い終えたらしきティッシュペーパーを握っていたので、捨ててあげようと取り上げたところ、なんだか固いものが入っている感触が・・・。
「え!? なに・・!?」と思って広げてみると、その中には母の入れ歯が握りつぶされ入っていました。
下の入れ歯だけ勝手に抜いて、ティッシュに包んで握っていたようです。
新しい入れ歯を作り直さなければ!!!
どうしようぅぅぅぅぅぅぅ!!!
ここまで認知症が進んだ状態で、新しい入れ歯なんて作ってもらえるんだろうか?
ということが、私にとっては最大の不安でした。
口を開けて入れ歯の型を取ったり、調整をするなんてことを、認知症の母がおとなしくやってくれるとは思えませんでした。
その後、訪問で来てもらえそうな歯医者さんを急いで調べ、数日後、家に来て診てもらえることになりました。
訪問の歯医者さんはさずがプロです。かなりかわいそうではありましたが、嫌がる母の口を開けさせ、スピーディーに歯型を取るなど やるべきことをこなしていきました。
時にはホラー映画なみの形相で 嫌がったり叫んだりもされましたが、私が手をぎゅっと握って「大丈夫!大丈夫!」と なだめたりすることで、なんとか乗り切ることができました。
もう歯医者さんも私も必死でした。でも、母が一番必死だったとは思いますが。
入れ歯の調整も含め、6~7回位の訪問で、なんとか終わりました。
認知症が進んだ状態でも、歯の治療はできなくはない とは思えましたが、家族がそばについて手を握ってあげるなど、安心できるなにかの策はあったほうがいいな、と思いました。